第10回アマチュア全国竹芸展入賞作品(平成17年度)

最優秀賞

絞り網代編み盛篭

 平野 貞一〔栃木県大田原市

サイズ:33×37×27

 この作品の何よりも素晴らしい特徴は、円形をなす緊張感のある輪郭線である。一般的には取っ手と篭部分が別々に作られてつながれるが、この作品では一体で作られている。それが張りの強い円弧を描く強靭なフォルムを作り出している。篭部は上の枡網代編みと下の網代編みの二重とし、下部の網代編みがそのまま伸び上がり取っ手部を形成している。形を作ろうとする作家の意思と、戻ろうとする竹の意思がぶつかり合い、力強いフォルムが形成されている。

-金子 賢治-

優秀賞

「深層」

 初田 徹〔東京都三鷹市〕

サイズ:20×20×27

 末広がりのこの作品は、誰もが一見して分かる四つ編みで形が出来ている。

 しかしその編み方によって、中の筒状のところの明るい色が、外側の黒い線の編み目を引き立てている。

 このような効果は、編組作品の面白さでもある。技巧を押さえて素材の良さを生かした作品に仕上がり優作である。

-勝城 蒼鳳-

煤竹笹舟盛籠「せせらぎ」

 長谷川 渉〔栃木県大田原市〕

サイズ:27×90×25

 作品名のとおり笹舟を模したものである。子どもの頃、小川のほとりで遊んだことを思い出させほのぼのとした温かみを感じさせる。表面は柾割したひごを4本束ねたものを編んだもので、中ほどを交差させ小川の「せせらぎ」を表出しアクセントをつけたところが心憎い。技巧の高さを感じる。

 本物の煤竹を用いており、自然の色合いが美しい。惜しむらくはやや平面的で、華やかさに欠けるきらいがある。少しひねりを加え、裏面を少し見えるようにしたならば、2本とびの網代編みも見え、表面と裏面とを異ならせた編みの複雑さ工夫がうかがえたのではなかろうか。

-柏村 祐司-


盛篭「稔り」

 安達 良一〔栃木県二宮町(現 真岡市)〕

サイズ:43×66×5.5

 底作りの表面を波網代に、裏面は枡網代で二枚重ね合わせたものである。波網代は幅の異なるヒゴ一定の順に使って3本とび網代を編んでいくと、動きのある曲線の編み綾が現れる。ヒゴの幅は3段階から5段階ぐらいのヒゴで編むことになる。厳密に言えば1本1本少しずつ増減した方が、より滑らかな曲線模様を得ることとなる。

 波網代編みの明るい色調と縁取の強調された輪郭により作品全体を一段と引き立たせた作者の造形感覚の良さが窺われる傑作である。

-綿貫 清-


デザイン賞

巻き六ツ目編花籃

 渡邉 孝作〔栃木県那須塩原市〕

サイズ:26×33×35

 六つ目編みを籐で巻く、いわゆる巻き六つ目編みによる籃である。裾が広がる独特な形にまとめていることもさりながら、何本も挿入されている紫竹のヒゴが効果的である。長側面に斜めに交差する20本、短側面に6本、それぞれ籐で巻き止めている。この色彩的な変化がデザイン的な効果をもたらしている。

-金子 賢治-

連続蜘蛛の巣編み花籃「出穂」

 髙橋 定男〔栃木県大田原市〕

サイズ:18×38×28

 シンプルな形といい編み目といい、実に清楚な感じがする。デザイン賞にぴったりの作品である。連続蜘蛛の巣編みという新しい技法を駆使したところに、作者の新しいものに挑戦する意気込みが感じられる。口の部分を長方形でなく、変型の六角形にしたところも変化があっていい。全体に好感がもたれる作品である。

-柏村 祐司-


挿し六ツ目花籃

 栗田 清〔栃木県大田原市〕

サイズ:21×21×30

 僅かに一辺を短くした不定形を四枚組み合わせた矩形の単純だが安定した不思議な形。そして、大きな黒い落としとのバランスがとても良い。

 刺し六つ目という技法の編み方で基盤を編み、別に染めつけた素材で縁取り風にデザインした美しく軽やかなテクスチャーを持った佳作である。テクスチャーとは材質感と訳され、造型にとって重要な要素の一つである。材質は作品の根本を成すもので、この作品の、のびのびとした生命感はいきいきとして気持ちが良い。

-日原 公大-


新人賞

青海編花籃

 堀越 敏行〔栃木県足利市〕

サイズ:21×21×27.5

 花籃は、いろいろな編み方を使って形を作りますが、この作品は二 重編みの作品ですが基本を正しく守りながら、胴の青海編、そして上部 の透かしや拭漆の色の上りも良く、作者の感性が見えてこれからを期 待したい。

-勝城 蒼鳳-

挿し六ツ目花籃

 緒方 勝彦〔栃木県大田原市〕

サイズ:23×36×32

 六角に編みひろげた底編みのうち四点を角として起こしてみると、上が広がった舟型の篭ができる。底編みの続きが段々と増えていく。回しヒゴで編み上がっていくのと異なり、斜めの六つ目編みとなるので一目一目を正確に目を揃えていかないと"ひずんだ"篭になってし まう。この作品は同じ形の篭を二枚作って重ね合わせたものである。細い挿し竹は二枚重ね合わせる以前に外側の篭の六つ目の編み目に挿 し編みしたものである。

 縁取、取っ手の蝶結び、柄巻きなど新人とは思えない実用性の高い まとまった作品である。

-綿貫 清-


柾割り手さげ篭

 藤井 賢次〔埼玉県さいたま市〕

サイズ:11×25×19

 柾割の材料を二本腹合せにして三本飛びの網代編みで形が出来ている。手は竹の根を曲げたものである。

 この作品は使っている内にだんだん自然に色調が変化して、使う方の気持ちと作品が一体となり、時間と共に作品を味わうことが出来、工芸の良さを内に秘めている作品である。

-勝城 蒼鳳-