第21回全国竹芸展入賞作品(平成28年度)

最優秀賞

オブジェ「黎明」

 杉浦 功悦〔大分県別府市〕

サイズ:48×44×28

 リームのある巨大な巻貝のようなかたちである。貝殻のごときフォルムは、フラットな面と、張りのあるアーチを描く面とで構成されている。フラットな面を形成するのは、やや厚みのある竹ヒゴの両端2か所を捻ったもの。アーチ形の面は、より細い3本のヒゴをアーチの頂点で括りながら連続させている。

 渦を巻く形態の底は、中央で盛り上がり、原初的なエネルギーのありようを想わせる。何かが始まろうとする予感のようなものが、竹ならではの量感の構築によって表現されている。

-外舘 和子-

優秀賞

メトロポリス

 横山 修〔大分県別府市〕

サイズ:33.5×40.5×40

 作品名「メトロポリス」は、数ミリ幅のヒゴを何層にも重ね圧力をかけ接着、Uの字に加工した竹の集積材を複数組み合わせて構成された作品である。色調も竹の表皮とミを交互に挟み二色のコントラストが形状とマッチし、近未来を想像させる造形となっている。

 作者は、一般的な竹芸技法の編みや籐結びの作業を省き、2年6ヶ月という経験年数をアイデアとデザインで、編組の技術力不足を補うため試行錯誤で考え出したものと推察される。

 現在の竹芸技法・デザイン・造形の中において、木材加工の技術を応用したような接着・組びみ合わせ・鋲による接合で表現されたこの作品には、竹芸作品の新たな表現領域に挑戦し、更なるデザイン・技術展開が期待される。

-本間 秀昭-

技能賞

花籠「魁」

 隈 博實〔福岡県北九州市〕

サイズ:54×62×43

 平割を叩いて平らに広げた材料八本と竹縄と竹根とを使用し豪快に編上げた作品である。内側は麻の葉編で裏打し外側と内側との対比も見事である。この技法で創作する作者は少ない。素材の特性が存分に発揮され、魁に相応しい表現となり優品である。

-勝城 蒼鳳-


デザイン賞

竹あかり「なごみW4S」

 井上 守人〔栃木県那須塩原市〕

サイズ:21×21×47

 デザインという意味を英和辞書で引くと「設計」「意匠」とあります。意味は、様々なものを包括していて簡単に一言では説明できませんが、そもそもデザインとはデッサンと語源を共にしています。人間の行為は、特定の目的を達成させるために計画し(設計)、それをより良くする為に形、色、模様、配置など装飾上の工夫(意匠)を考えるものです。今回のデザイン賞は、デザインの言語の意味からも適切な選考だったと思います。簡潔なフォルムと光が入ることを想定した文様、新鮮に竹の素材感を生かしたアイデアは心憎いまでに計画されています。ただ、惜しむらくは把手に一工夫欲しかった。

-日原 公大-


新人賞

鉄線バック

 劉 美儀〔京都府南丹市〕

サイズ:15.5×40.5×36

 白錆の竹が爽やかな印象を与える、鉄線編みのバッグである。高台として付けられた竹は、実用性だけでなく、見た目の重心を上げることに一役買っている。経験年数1年半程とされるが、飽きのこないシンプルな形でまとめられた、作者の感性の良さが光る作品である。

-鈴木 さとみ-


枡網代編花籃

 澤村 正芳〔茨城県大子町〕

サイズ:24×24×26

 微妙な色の違いがアクセントとなった、桝網代編みによる花籃。縁のかがりも丁寧な仕事ぶりである。シンプルな取っ手は嫌味がないが、付け方にもう一工夫欲しい。今後は「落とし」(花を活けるための竹製の筒)の高さや削り、塗り等も研究し、花籃との調和や相乗効果を考えられてもよいかと思う。

-鈴木 さとみ-