第6回アマチュア全国竹芸展入賞作品(平成13年度)

最優秀賞

透し二重合わせ花籃

 藤原 広子〔栃木県大田原市〕

サイズ:25×36×24

 一見古風に感じられる耳付の花籃ですが、大らかな形、縦網代から横網代四ツ目編み、又、横網代と編み分けて、底組みからリズミカルに編み上げている。広げたロの部分は一重にし軽やかで、細く軽い耳も新鮮である。古来からの花籃の様式を踏まえながらも、現代空間にも適合しうる格調高き傑作である。

-勝城 蒼鳳-

優秀賞

花差し  

 八木澤 又男〔栃木県黒磯市(現 那須塩原市)〕

サイズ:16×16×118

 孟宗竹の持つ力強さと竹の持つ弾力性とを巧みに生かした作品である。孟宗竹の中央部を薄く削りこれを折り曲げたもの2本を組み合せ、真ん中を竹の輪で押さえている。それにしてもまるで知恵の輪、どこからどのように組み合せたものか摩訶不思議なものである。

-柏村 祐司-

手さげかご「雅」

 井上 守人〔栃木県西那須野町(現 那須塩原市)〕

サイズ:17×30×40

 審査の時には「雅」という作品銘は誰も分からず、形態や作りの確かさに依って選びます。この作品は鉄線編の明るい色調を縁取の強調された輪郭線により、作品全体を引きたたせて明るく楽しい造形としている。編組物はいろいろな分野で応用されておりますが、この作品は竹の素材が最大限に生かされていて、「雅」の銘に相応しい優作である。

-勝城 蒼鳳-

ショルダーバック

 田澤 昭吉〔栃木県馬頭町(現 那珂川町)〕

サイズ:12×33×20

 竹の硬さを感じさせない作品である。底を網代編みでスタートし、腰から胴へ移行するなかで、網代編みの組み替え変化を規則正しく繰返し、最終的に四つ目編みに変化させたところは作者の技量である。内側の布張りと、籐芯とによる縁との感触、ベルトの取り付具、口止め具の煤竹によるアクセントなど、いやみのない仕上がりで、優れた作品である。

 比較的色物の多い作品のなかで、竹の特性である、竹の素肌は、ひかえ めであるが故、目立たないところの竹の質感を充分に引き出した技量は造形以前の素材作りの段階から作者の感性が窺える。

-綿貫 清-


デザイン賞

秋風を彩る

 東 次男〔埼玉県鴻巣市〕

サイズ:40×80×70

 この全国竹芸展は、竹を素材とした総合展なので用途はバラエティーに富む。そのような中で観賞して楽しむ。いわゆるオブジェ的な作品である。枡網代を染め分けた材料を使って編み、動きのある曲線によって爽やかな感じを醸している。観て楽しむ作品は、用の制約がなく無限な発想が出来、この作品は自己の感性を追求した結果生れた形といえる。

-勝城 蒼鳳-

連続くもの巣編み花かご

 保木元 智香子〔茨城県土浦市〕

サイズ:30×30×25

 この作品が目を引くところは、作品名の通りくもの巣編みが連続することと全体の形である。ロの部分は、大きく三角形に取り、しかも二重かと思うと三重にも見える縁取りがなされている。本体の形は一見不定形のように見えるが編み目と同じく六角形が基本になっている。デザインのユニークさが面白い。

-柏村 祐司-


花篭

 髙梨 昌直〔群馬県前橋市〕

サイズ:14.5×15.5×38

 底を菊編みに、腰以上が飛びござ目編みになっている。円錐形に延びた線が、首を境目にくっきりと広がった鍔、そして軽快な雰囲気を感じさせる取手。小振りな作品であるが、竹の特性が強調された野趣ある作品である。赤実の蔓物投げ入れる楽しさも連想できる。

-綿貫 清-


新人賞

輪口編夫婦盛籠

 狩野 利彦〔栃木県大田原市〕

サイズ:36.28×36.28×7.6

 この作品の特徴は見える所に籐で止めたところが無いことである。編み方は網代ですが、内側から編んで外側に返し、底で処理して仕上げる無双という作りである。白錆竹の美しさと中心を染竹で模様を浮き出させた作りは竹ならではの味わいが良く出ている。経験年数2年半ぐらいとのことですが、無理のない形は作者の感性の現われである。

-勝城 蒼鳳-

くもの巣編盛篭

 藤田 千種〔栃木県西那須野町(現 那須塩原市)〕

サイズ:20×20×15

 小さな盛り籠の中におおらかに3種類の網み方が織り込まれて、たおやかな統一感が人の心を和ませます。色の感覚には目を見張るものがあります。心残りは、さほど大きくないフォルムに対し材料が太すぎたのではないでしようか。蓋も大きすぎるように思います。前もって作りたい物の大きさ、デザイン、テクスチャーがバランス良く見えるようにデッサンをして確かめるのも一つの方法です。

-日原 公大-

網代透かし花籠

 平野 隼人〔栃木県南那須町(現 那須烏山市)〕

サイズ:15×15×47

 縦網代、横網代、4つ目編みと様々な編み方の連続で変化を付けた堅牢な感じのする6角の花籠で技術力は見事です。人を安心させる構築性があります。只、全体の大きさ、テクスチャーに対して骨組みの太さが少し、ごつい感じがします。手の長さ付き方にバランスを欠き重苦しい感じがするのが残念です。作者は大変几帳面な人だとお身請け致します。少し作品の中で息抜きをしたらいかがでしようか。

-日原 公大-