第3回アマチュア全国竹芸展入賞作品(平成10年度)

最優秀賞

櫛目編もあれ紋花籃

 東 次男〔埼玉県鴻巣市〕

サイズ:20×43×22

 フランス語でモアレというと波模様を付けた織物のことである。キラキラと輝く波が穏やかな入江の中で止めどなくお喋りをしているような語感がする。しかも月が満々と輝く入江の中でこの花籠は楽しいお話しの他にいったい何を盛ろうと言うのか。作者の洒落たセンスは、柔らかい四角の中ですっきりと静かなボリュームを作り出し、細目の竹で構成した紋様は軽やかなムーブマンを感じさせる。優雅な造形は竹の生命感を生き生きと表現しているのでますます観賞者のイメージを膨らませることになる。

-日原 公大-

優秀賞

伝統工芸の部

花籠夕映え

 小出 健吾〔大分県本耶馬溪町(現 中津市)〕

サイズ:29×29×29.5

 千鳥編の二重籠である。壷形の丸味のある胴に斜線の模様が映えている。大分県からは過去にも素晴らしい作品が発表されているが、この作品は淡い色調の中に斜線の模様が生きていて、従来の作品とは違った味わいのある作品となっている。伝統の術法を踏襲しながらも、作者の感性が見事に伝わり、タ映えの趣きを釀している。

-勝城 蒼鳳-

クラフトの部

ペーパーケース

 福田 光子〔栃木県大田原市〕

サイズ:16×31×10

 ペーパーケース。題名ではそうなっているが、いわゆるティッシュケース入れである。工芸的な中にも女性ならではの日常生活感がにじみ出ていて面白い。今、竹を素材にした編み組の世界は曲がり角にある。日常生活用品は次第に姿を消しつつあり、かといって芸術性の高い工芸品は、そう数多く普及出来るものでもない。工芸的でありながら、日常生活の中で使用出来る、ここでいうクラフトこそ、竹編み組の新しい世界があるかと思う。そうした意味においてこのペーパケースは、新鮮味があふれ心楽しくなる作品である。

-柏村 祐司-


自由創作の部

屛風

 寺島 秀昭〔群馬県北橘村(現 渋川市)〕

サイズ:7×41×119

 はじめ見た時、編組見本の展示みたいと感じたが、そうではなかった。大変に計算された作品である。

 枡アジロの編み面、竹の負の特性である湾曲を避けるように、皮目と身を半々に使ってピッタリ平面を編み上げた。ヤッタネ。

 枠作りは木工指物の技術になるが、ここでも湾曲を避けるため竹を腹合せ接着でピシッとまとめた。縦材、横材のバランスもすっきりまとまった。ウマイ。

-宮﨑 珠太郎-


デザイン賞

伝統工芸の部

二重編本麻の葉盛籃

 内藤 昌治〔栃木県大田原市〕

サイズ:35×32×5

 大変な技巧を駆使したものではないが、でもシャレタ雰囲気を醸し出している。これがデザイン賞たるところである。「手づくり」だけでなく「頭づくり」が大切だという、よく考えられた作品である。

 麻の葉編みを二重にした微妙なズレが最大の効果を生んだ。一重だったら全くダメだったろう。縁捲きの外側を鱗つなぎの如くにし、内側を二本寄せにした考えなどは、実に憎いものがある。

 縁の中の処理にちょっと心配は残る。

-宮﨑 珠太郎-

クラフトの部

郷愁

 南 千恵〔東京都三鷹市〕

サイズ:20×10×20

 作者は昨年もバッグで受賞している。手慣れて来たというか、佳境に入ったというか、破綻なくまとまっている。

 二本寄せ亀甲編みヨシ。縁のコロガシ捲き、縁下の飾り捲きヨシ。籐で拵らえた蝶番、留め具ヨーシ。肩紐の取り付け部分の扱いもヨーシ。肩紐の二本寄せの結びも気がきいていてヨーシ。本皮だったらもっと良かったかもしれない。

-宮﨑 珠太郎-


自由創作の部

秋月

 千代田 忠〔栃木県大田原市〕

サイズ:53×53×40

 この作品を見る時、まず篠竹の素材の味が出ていることである。底の編は鉄線編であるが胴作りは透し網代にし、その先の編み残した材料を応用し友縁巻としてある。手も同材料である。秋の野草を活けて月を眺めながら、次の作品を構想する作者の姿が目に浮かぶ思いがする。

-勝城 蒼鳳-


新人賞

伝統工芸の部

二重合せ手付盛籃

 磯飛 節子〔栃木県黒羽町(現 大田原市)〕

サイズ:26×35×19

 編みの技術、形ともに他を圧倒するような華々しさはなく全体的に控え目である。しかし、盛器の部分は表面が松葉編みと青海編みを組合せ、裏面を網代編みと二重に仕上げ、縁は、薄く柾割りにした裂く片を重ねて優美に整え、また、器の下部には、わすかな高さであるが台を取り付ける等控えめながらも細かな配慮が見られ好感の持てる作品である。

これから大作へも挑戦するのであろうが、謙虚さも忘れずに精進される ことを期待したい。

-柏村 祐司-

クラフトの部

白錆麻の葉編み花籠

 鈴木 きみ〔栃木県大田原市〕

サイズ:15×15×38

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 底は麻の葉編ですが、腰から上が鱗編(麻の葉編)として、途中より四つ目編に替えてスッキリとした仕上りとなっている。投入花籠の基本を忠実に守りながらも、竹芸を追及して見ようという姿勢が伺える。独創する力が付けば将来楽しみだ。

-勝城 蒼鳳-