第20回全国竹芸展入賞作品(平成27年度)

最優秀賞

オブジェ「宙」

 杉浦 功悦〔大分県別府市

サイズ:50×50×54

 極細の竹ひごを用いてところどころ籐で括りながら、ボリュームのある有機的な空間を築いている。形態の緩急に合わせ、括られた竹ひごの四角い目も大小に変化し、全体がゆるやかに漂うような動勢を示している。観る者が“形”を認識できるぎりぎりといってもよいフォルムの量感に対する目の大きさは、竹ひごという繊維状素材の極限に挑んだものといってもよいだろう。斬新な表現でありながら、その実、竹の軽さ、張り、細さに比して強さのあることなど、素材の特性を周到に生かした造形でもある。何より、まだ見ぬ竹の形を、貪欲なまでに探求し創造しようとするこの作者の姿勢が頼もしい。

-外舘 和子-

優秀賞

盛籃「笹舟」

 髙木 政美〔栃木県益子町〕

サイズ:21×47×17

 低めの持ち手を付けた小判型の盛籃。

 作品全体がバランスよくゆったりとしたフォルムに仕上がっている。見込み中央部は3本寄せのヒゴで鉄線編みとし、上下はヒゴをばらして透網代にし変化をつけている。

 伝統的な手法ではあるが、縁の左右に籐飾りの丸紋を取り付けており、煤竹の手・縁・高台の巾・厚みの仕上がりも程よい。

 今回この作品に関して習作的という問題があったが、作品全体が醸し出す雰囲気が良いという審査委員の一致した見解で入賞とした。

-田中 旭祥-


技能賞

花籠ふるさと

 井上 数夫〔福岡県福岡市〕

サイズ:25×31×17

 本作品は二重に編まれている。内側の底の編み始めは網代で七廻しをかけて丸く広げる古来からの技法を駆使し徐々に立ち上げてふくよかな形態である。外側には煤竹を用いて素材の味わいを見事に表現している。このように底組から縁までを一貫して編み上げる技法は数少なくなっている中で光っている。色調も良く楕円の形も軟らかく花を包み込むような作者の感性が伝わる作品である。

-勝城 蒼鳳-


デザイン賞

高秋

 前田 悦子〔栃木県那須塩原市〕

サイズ:15×26×42

 「高秋」という題名のハンドバッグ。四角を基調に整然とした造形力は安定感があり魅力を感じる。網代に編んだテクスチャーは、角度が変わると様々な色に変化するように面が取られ、その奥のきらりと光る錦糸が木漏れ日を連想させる。更に、留め金も取手も同素材で作られており、全体の調和を壊さないように色と形に配慮した仕掛けは心憎いほどの繊細さである。自分が使うならこんなデザインが良いと、明確な目的意識を持った作品だ。留め金を開けた瞬間、冬の寒さに立ち向かう渾身の秋がそこに居た。

-日原 公大-


新人賞

息吹

 横山 修〔大分県別府市〕

サイズ:64×46×93

 経験年数3年未満が条件の新人賞、対象作品21点中、唯一の造形作品。

 平割りのヒゴを束ね、竹の弾力性を生かした流線形の構成で躍動感あふれる作品にまとめている。今後ヒゴの幅や厚み、色の変化、空間やリズムなどを考え、より整理した形へと展開が楽しみな作品である。

-本間 秀昭-


手提げ篭

 吉成 真弓〔栃木県さくら市〕

サイズ:14×28×17

 経験年数1年4ヶ月でこれだけの作品を作るのは驚きである。

 竹材を先染めした後、底を枡網代に組み3本網代で腰上げの後、材を前後に振り分けて立体感をだしている。 縁は煤竹であるが、持ち手は手に優しい皮製で、中には着脱できる巾着が仕込まれており、使い勝手が良い。

できれば縁を底寸法より小さめに仕上げると形が引きしまったバックになったと思う。

-田中 旭祥-