第18回全国竹芸展入賞作品(平成25年度)

最優秀賞

一心三愛

 伊藤 賢三〔千葉県佐倉市〕

サイズ:41×41×34

 竹の弾性としなりを活かした、はち切れんばかりのボリューム感あふれる作品である。竹ひごは底から上へ充分な膨らみを示しつつ、上部中央で捩じれながら再び底へと向かう。竹ひごの透かし効果により、アウトラインを形成する空間の内部に、もう一つの空間が見える。構造そのものがフォルムになるという竹工芸の醍醐味を味わうことのできる作品である。

-外舘 和子-

優秀賞

花籠「竹林晩景」

 寺島 秀昭〔群馬県渋川市〕

サイズ:17.7×17.7×39.3

 ござ目編を基本に、焦げ茶と白の竹ひごの濃淡を駆使した、精緻で幾何学的な文様のリズムを刻んでいる。確かな編の技術には微塵の破綻もなく整然としている。全体に細長いフォルムながら、下方をわずかに膨らませ、控え目な抑揚の効いた現代的な形態感を示している。ござ目編という極めてベーシックな編の技法によりながら、新たな表現の可能性を切り拓いてみせた清新な作品である。

-外舘 和子-


技能賞

松葉二重編波口花籠

 本間 信夫〔栃木県那須塩原市〕

サイズ:20×20×29

 内側の籠で形を作り、腰上のところに立竹を差して、高台と上部を松葉編で編む伝統的な技法である。松葉編は立竹が奇数になるように何箇所か飛ばして編んだところの斜線を生かして文様としている。縁の曲線と耳は従来とは違った新鮮さが伝わり、色調も明るく全体を纏め、用の美としての竹工芸の味わいが出ていて好感が伝わる作品である。

-勝城 蒼鳳-


交色波網代編盛籃(漣)

 内藤 節子〔栃木県大田原市〕

サイズ:33×44×19

 周囲を力強く束ねて縁取った中に、濃い赤を利かせた二色のひごが、揺らめく水面のような景色を示している。持ち手は中央で水平のラインを保ち、本体の楕円形との好バランスを得た。周囲の束ね編が、やや濃厚に過ぎるきらいもあるが、水面を取り巻き、生い茂る草むらのイメージもあるのだろうか。全体に、作者の旺盛な意欲と技量とを充分に感じさせる作品である。

-外舘 和子-


デザイン賞

煤竹鉄線編盛籠(絆)

 伊坂 富子〔栃木県大田原市〕

サイズ:30×40×20

 楕円の形が美しい。その楕円を包み込むように太い線の楕円が創られ、更に光りの楕円の輪が取り囲むように存在し、次に取手の輪に続いていく。全て楕円の構成になっていることが心憎い作品だ。楕円は二つの中心を持つ形で、様々な要素を取り込むことの出来る不思議な力を内包している。色々な風景を想像させる形を線と面に最大限に生かした作者の力量と構成力は見事である。

-日原 公大-


手さげかご「2013 S モデル」

 井上 守人〔栃木県那須塩原市〕

サイズ:14×32×34

 太い枠の変形ハートにデザインされたフォルムの中に細かく編んだ面を配置して優しい雰囲気を醸すハンドバッグである。

 非常に平面性が強く、各方面から眺めるとそれぞれの形が違って見えるが、それほどの違和感はない。面の移り変わる場所を意識しない立体物は量のバランスを失う事が多いがこの作品は縁取りされた骨組みの幅が面の量との均衡が取れているからであろうか、バランスがよい。

-日原 公大-


 佐藤 治生〔大分県大分市

サイズ:41×41×15

 約1センチ幅で茶と無着色な材料をドーナツ形に規則正しく並べた量感あふれるオブジェ的な作品である。そもそも造形することは素材の質感を無視しては成立しない。竹の素材感は堅くしなやかで作者の思惑に沿って様々な形に変容する。得てして正円の造形は求心的な力が働き、バランス、安定感は増すがこぢんまりとしてしまう傾向がある。しかし、この作品は竹の堅い外側を使用しつつ、遠心力を感じるように色彩の違う素材間に隙間を持たせて空間感を与えている。作者の造形に対する思索と感性が滲み出た良作である。

-日原 公大-


新人賞

鉄線編み盛籃

 勝城 直〔栃木県大田原市〕

サイズ:35×35×12

 鉄線編のたっぷりした盛籃である。見込みは濃淡に染め分けた籤を2本寄せして鉄線編みとし側面はそのまま流して透かし網代にしてあるのでスッキリとした印象を与えている。外側は幅広竹で荒組の四つ目とし、縦材を挿してそのまま高台部の縄目へと続く。

縁竹をマスキングして文様を出しているところが新人らしいアイデアで楽しい作品である。

-田中 旭祥-