第12回全国竹芸展入賞作品(平成19年度)

最優秀賞

千鳥編花籃

 井出 賢〔栃木県大田原市〕

サイズ:24×32×26

 ふっくらと下膨れの形をした籃で、首の部分を縦だけの組として透かし、変化をつけている。口縁部も抑揚のある曲線としている。膨らみといい、口縁の曲線といい、適度に抑えられて、実に絶妙なバランス感覚を見せている。胴部の編みの下から上に向かって、横のヒゴが縦のヒゴを一本飛ばすところから二本飛ばすところに移行する部分で最も膨らんだ部分を作り出し、また口部に向かって一本飛ばしに戻る。その飛ばしを上から下へ向かうに従い右へ一つずつずらすことによっていわゆる千鳥足型の「千鳥編」を作り出すのである。

-金子 賢治-

優秀賞

綸子網代竹手筥

 山本 清彦〔奈良県宇陀市〕

サイズ:25×35×11

 伝統模様の綸子網代を丹念に編み上げ、正確で堅牢な飾縁で纏めた手筥。仕上げの拭漆も上品な完成度の高い秀作です。

 次作の指針、網代模様の創作(既存しない自作模様又は文字網代)と膨らみ天板仕上げ等の試みに期待します。

-本間 一秋-

束ね編み花籠「夕日のサハラ」

 長谷川 渉〔栃木県大田原市〕

サイズ:25×70×42

 作品のモチーフが雄大である。また、作品そのものもおおらかである。竹工芸でこのような表現を試みることは至難である。

内側を2本飛び網代で編み、外側を束ねで青海編を応用し、黒いヒネをアクセントに挿入しイメージをより鮮明に仕上げてある。従来にはなかった表現方法で、竹工芸に新風を加えた優品である。

-勝城 蒼鳳-


網代編花籃「萌2007」

 井上 守人〔栃木県大田原市〕

サイズ:20.5×30×37.5

 他の作品と違い一見してモチーフが解る新鮮味あふれる造形上の可 能性が有る秀作である。イタリア語でトルソと言う人の体を表現する方法を使い、工夫した作品である。トルソとは体の部分を誇張したり 省略したりしてつくる作品のことである。工芸であるからこそ何を作るか意識の明確さが要求されるなかで着眼点は良く彫刻的で、期待が 持てる。

-日原 公大-


デザイン賞

風車編み花籠「夢想」

 保木元 智香子〔茨城県土浦市〕

サイズ:24×37×26

 風車の文様と作者の想いを形に託した造形は、日頃の研鑽の現れで ある。藤の加飾も最小限に抑え無理なく素材を生かし、用の美と言う 工芸の良さを充分に発揮された作品である。

-勝城 蒼鳳-

ハンドブック亀甲編

 小原 民江〔茨城県常陸大宮市〕

サイズ:11×30×23

 磨き竹の淡いナチュラルな亀甲網代編みに、底角丸縁でまとめた上 品なハンドバッグ。飾ロ縁は、もう少し軽くしたく、持手とその取付 けを堅牢に一工夫ほしい。

-本間 一秋-


鉄線編花篭「楓」

 木村 利明〔群馬県渋川市〕

サイズ:13×36×25

  いわゆる鉄線編をヒゴを三本使うことによって洒落た感じに仕上がっ ている。明るい色感に磨かれた二本のヒゴの間に紫に染められたヒゴ をはさんで一単位を作り、それを鉄線編にしたもので、少し離れて眺 めると、紫部分が抽象画の線描のような、あるいは何かアラベスク模 様の壁画の一部のような、とても面白い効果を発する。そのあたかも 壁のタイルのような板を二枚、太作りの縁でしっかり固定し、中央を 膨らませ、花篭としたものである。その幾何学的なすっきりとした形、ふくらみの緊張感。その心地よさがデザイン賞となった要因である。

-金子 賢治-


新人賞

菓子皿

 髙木 宏〔茨城県筑西市〕

サイズ:33×25×3

 楕円形の飾縁と底縁の覆輪の中に花が咲いた様な、桝文網代が美しい菓子皿。作者独自の工夫が、縁・網代編・色彩と仕上げに施されてある。

 今回唯一の新人賞。

-本間 一秋-