第7回アマチュア全国竹芸展入賞作品(平成14年度)

最優秀賞

筈挿し盛籠「ハーフ」

 長谷川 渉〔栃木県大田原市〕

サイズ:25×90×28

 自然に範を求め、個性的なデザインが施され、矢筈挿しと麻の葉編を組み合わせた作品。面に大胆なひねりのムーブマンを取り入れ躍動感を表現している。作品に厚みを持たせて豊かなボリューム感ある魚の形は生命感溢れ魅力的である。平面を、より立体的に見せるために凹面の陰影を表現手法として使ったキュービスト達の凹面処理技法を思い出す現代的造形感覚をもった秀作である。

-日原 公大-

優秀賞

連続ますあじろ合せ花篭

 薄井 敬二〔栃木県氏家町(現 さくら市)〕

サイズ:27×27×21

 この作品は二色に染め分けた素材をます網代の技法で四方に組合わせ、ふくらみを持たせ豊かさを感じさせる落着いた雰囲気を出している。色調も上品で感性の良さを感じさせる作品である。バランスもよく見る人の心をなごませる作品でもある。

-八木澤 啓造-

枡網代編盛籃

 平野 貞一〔枡網代編盛籃〕

サイズ:31×45×27

 底作りを枡網代とし、縁竹は楕円の曲線で立体化してある。その曲線にそって、底の網代編竹の延長を側面で櫛編みとして、上部取手のところで曲輪の縁竹と共に一カ所に全部集めて纏められた「技」はすばらしい。取手の藤飾りは、底の枡網代と同様に統一し、緻密な計算で処理されている。物静かな目立たない作品のなかに作者の人柄を思わせるものが滲みでている。経験年数以上の感性が良く現れた好感のもてる作品である。次回にも期待がもてる。

-綿貫 清-


連続くもの巣編み盛籃

 菊池 幸雄〔栃木県大田原市〕

           サイズ:41×41×5

 連続くもの巣編みは、種々ある編方の中でも特に深みのある編方である。その編方の特性を生かし、奥行きのある文様の一個一個が、グラデーションによって美しさを増している。

 また、竹芸の良さである六つ目が浮き立ち、縁取りも文様に合った柔らかで上品な仕上がりとなり、好感の持てる優品である。

-勝城 蒼鳳-


デザイン賞

波網代編盛籃

 増居 外也〔栃木県大田原市〕

サイズ:36.5×38.5×19.5

 平面的になりがちな編面に立体感を持たせ波紋網代を時間をかけて編組してあり底になる外側と内側を二重に重ね編み力強い作品である。手と籃のバランスもよく取り付けてある安心して用いる事ができる秀作である。

-八木澤 啓造-

網代二重編文箱

 橋本 邦史〔栃木県大田原市〕

サイズ:30×20×13

 薄色に染め分けた材料を使って大きな模様の枡網代を爽やかな感じに編まれている。箱の蓋の輪郭線も大らかな形が実に良い、素直な曲線がきれいに表現できている。縁巻加工も箱の各コーナーの藤巻加工も堅牢性を重視した、実用性に値する良く纏まった作品である。

 古くから印籠物は、丸形にしろ、角形にしろ身の作りと籃の作りの構造は最も大切な関係にある。したがって蓋は身箱に対して左右取り替えても無理なく開閉できることが大切である。

-綿貫 清-


新人賞

松葉千鳥二重花篭

 内田 勲夫〔埼玉県岩槻市(現 さいたま市)〕

サイズ:24×24×23

 何の変哲もない伝統的な円形の花籠であるが、良く見るとテクスチャーは縄目、松葉千鳥編み、松葉編目と幾通りにも編み分けて実に多彩である。変化を持った表面のテクスチャーは重厚さを漂わせしっとり密度のある素材の良さを引き出している。慎重な仕事振りが全体に滲み出た佳作に仕上がっていますが、口元の歪みが気になった。

-日原 公大-

スタンド

 伊藤 正一〔栃木県西那須野町(現 那須塩原市)〕

サイズ:32×32×43

 笠は輪弧編で丸味のある軽快な広がりとなっている。台の方は亀甲竹の素材を用い、照明の部分は麻の葉編で編まれている。照明器具は、内側からの明りによって映し出される線の面白さが楽しめる。この作品は竹そのものの味わいを損なうことなく形にしていて、作歴を重ねるのを楽しみにしたい。

-勝城 蒼鳳-


小いれ麻の葉花籠

 大貫 透〔栃木県宇都宮市〕

サイズ:25×25×30

 材料の幅を二種類作り麻の葉編で胴の部分は編まれている。そのため編目が爽やかな感じを与えている。上部は編目を変えて形を整えて軽やかなそして落着いた形となっている。他の分野の工芸でも網代の編方を応用して作品の一部としているが、この透かし編みは竹の特質を出せる編方なので追及されると良い。

-勝城 蒼鳳-