第24回全国竹芸展入賞作品(令和元年度)

最優秀賞

薄明

 林 純平〔大阪府堺市〕

サイズ:44×44×48.5

 最優秀賞を受賞された林純平さんの「薄明」。審査会場のテーブルに整然と並んだ作品群の中で、一際存在感のある美しい光を放っていました。一目見て、この作品が最優秀になれば良いなあ、と思いながら審査推移を見守りましたが、やはり多くの審査委員が同様の評をされた様で、見事な結果となりました。

 黒と白の繊細な竹ひごを上から下まで一本で編むことなく通して真ん中で絞った鼓形の作。二層構造の螺旋のテンションにて造形を成り立たせた構造。シンプルで思いきったデザイン。二層の表側と内側で螺旋の向きが逆なので、黒と白のストライプが交差してシンプルな中に複雑な色彩のハーモニーを生んでいる。

 受賞決定後に名前と経歴を拝見したら、芸歴5年の弱冠28歳。将来有望な若手作家だ。

 惜しむらくは、中央で絞った際の円の中心軸が外周と内周でずれていたこと。柔軟な竹ひごを中央に引き締める張り方のテンションにもう少しの緊張感と配慮を配り、円の中心軸を揃えていれば、文句無しの作品になりました。

 まだ20歳代、長い将来において今後さらに経験と精進を積まれて、基礎精度を高める技術も磨いて頂けることでしよう。

-濱田 友緒-

優秀賞

オブジェ「時空」

 杉浦 功悦〔大分県別府市〕

サイズ:42×50×50

 ねじられたヒゴが二つの三角形を成し、連続するメビュウスの輪のように繋がって行く。その流線形態は躍動的で時空の流れを感じさせる。

 最優秀賞と僅差の優秀賞ではあるが、作者の優れたデザイン力と確かな技術力により制作された秀作である。 

-本間 秀昭-


技能賞

石垣編花籠「結」

 藤田 千種〔栃木県那須塩原市〕

サイズ:34×34×16

 内側を輪弧で編みはじめ網代に編みて原形を作り、外側は網代の網目に立竹を差してその立竹に縄目編と青海編、次に胴の部分を石垣編としてある。肩のところは青海編から縄目編とし丹念に編まれていますが、全体の感じは爽やかさが伝わります。白錆に工芸用の明るい塗料で軽く艶出しをして古風にならない配慮がなされ加飾としての耳の「結」も無理なく収まり感性の高い優品である。

-勝城 蒼鳳-


デザイン賞

『大地創造』

 阿久津 正弘〔栃木県大田原市〕

サイズ:38×38×26

 他とは異なる構成方法で、朱に染色した竹ヒゴを積み重ね、極力編みを省いた作品である。竹ヒゴは反りを計算し、上部は板割り、中央部は柾割材を使う素材の特性に配慮した制作である。作者にとっては、あたらしい表現方法に挑戦した1作目、いくつかの修正点はあるものの今後の作品制作に期待したい。

-本間 秀昭-


新人賞

大花篭

 佐藤 博之〔栃木県那須町〕

サイズ:80×110×75

 竹の弾力性を生かして編み上げた大型の花篭である。造形は、計算されたものであろうか、それとも感性を頼りに形作られたものであろうか。いすれにせよ、躍動感があり、豪快、かつ自由闊達な雰囲気が感じられる。竹が枯れるにつれて、色合いや形がどう変化するのか、楽しみな作品でもある。

 花篭の中に置かれた笊もまた野趣に富む作品である。米とぎ笊を意識したものだろうか。縁の処理などが荒く、実用品としては厳しいが、この作品の中では相応しい。持ち手の部分にもうひと工夫あれば、さらによい作品となっただろう。

-篠﨑 茂雄-


白竹手つき籠

 森林 貴代〔栃木県那須烏山市〕

サイズ:16×25×32

 肌の美しい白錆の竹を用いた、清々しい印象を与える籠である。経験年数6ヶ月とされるが、張りのある形も良く、丁寧な仕事ぶりがうかがえる。ただ、把手を小さな楔のみで留めているのは心許ない。堅牢性と装飾性を兼ねた籐かがりなど、もう一工夫欲しかった。

-鈴木 さとみ-