第23回全国竹芸展入賞作品(平成30年度)

最優秀賞

纏う

 横山 修〔大分県別府市〕

サイズ:47×80×98

 会場に展示されている出品作品を見渡すと一際目を引いた作品である。櫛目編みで構成され、3つの方向から複雑に組み合わされている。竹の持つ優雅さ、軽やかさ、伸びやかさが表現できている。審査では作品が倒れてしまいそうな不安定さが指摘された。今後改善し、更なる完成度を期待したい。おおらかな広がりを感じる作品は、作者の未来の可能性をみることができる秀作である。

-田辺 竹雲斎-

優秀賞

鉄線編盛籃(紅)

 内藤 節子〔栃木県大田原市〕

サイズ:31×43×20

 作者は長年に渡り盛籃のフォルムを追求しており、今回も鉄線編の配色・持ち手の形状等ここち良く配置されている。見込みの3本寄せのヒゴは中心部は赤く外周へ行くほど黒を増やして紅色に染まるタ日を彷彿とさせる。

 側面に配した煤竹の星型の組も作品全体を軽やかに感じさせている。

 バランスの取れた造形感覚は長年の修練の賜物である。

-田中 旭祥-


技能

縄六目花籠「夕立」

 水野 哲朗〔広島県東広島市〕

サイズ:28×28×32

 本作は二重編み(着せ編み)の構造である。内底は菊底編み、内編みは御座目編みで形づくっている。外底は輪弧編みにし、三本網代で編んだものを挟み込むなど見えない部分にも美的な配慮がなされている。外編みは、薄い茶と黒に染め分けたごく細い竹ひごを縄六つ目編みにしている。よく見ると黒いひごは茶のひごに掛けておらず、最上面には現れない。それが離れて見た時に、奥行きをもった螺旋状の文様を生み出すのである。

 縁の下の部分は編み方を変え全体を引き締めている。縁も高台も幅を狭くとり、籐かがりも抑え気味にして上品にまとめている。ここまで破綻なく仕上げたのに惜しむべきは、塗料の目につく光沢感である。漆ならより深みのある艶で、竹の質感や編みの美しさを引き立てることができただろう。

-鈴木 さとみ-

デザイン賞

クシメリアン

 西川 理〔愛知県名古屋市

サイズ:28×28×23

 櫛目の曲線を組合せて造形された作品である。基本は六角形ですが10本ずつの湾曲した部品を24個作り組合せて線の流麗さを最大に生かし竹の爽やかな雰囲気を醸している。

 どの角度から見ても単純にならず線と空間の交差による動きが魅力的である。竹を素材とした作品は表現の幅が広いので鑑賞時の心を和ますデザインとして惹かれる作品である。

-勝城 蒼鳳-


新人賞

透縄目重亀甲花籠

 角野 弘幸〔大阪府島本町

サイズ:32×32×21

 底から束ね編みで編み上げた黒い竹ヒゴは外側の地竹(骨ヒゴ)となっている。二重に編まれた外側は色を変え、強弱のある縄目編みで構成されている。作者が試行錯誤し作品を作る姿が想像できる。経験年数が浅い中で難度の高い技法に挑戦し、工夫しながら制作したことが評価された作品である。

-田辺 竹雲斎-


盛籃「流」

 青天目 和之〔長野県東御市

サイズ:35.5×58×8.5

 色の調子が巧くいった秀作である。唯、楕円であろう基本の形が的確な主張をしていない。そもそも、円を作ることは難しい。コンパスで引くように円を書くならば誰でも出来るのだろうが、感覚を頼りに人の手で作るとなると簡単には出来ない。ましてや、楕円形は中心点が2つある。作者は初めから題名のような「流」をデッサンしていたのだろうか?

 全てのテクスチャーの調和を考えて欲しいと感じた。制作に取りかかる前に、作者の表現したい事を突き詰めてデッサン(表現)することをお勧めする。そうすると感性が自ずと全てを纏めようと付いてくる。

-日原 公大-