第15回全国竹芸展入賞作品(平成22年度)

最優秀賞

スパイラルの魅惑

 小野塚 昇〔千葉県佐倉市〕

 サイズ:25×25×40

 赤茶色のゴツとした塊が空に向かって飛び出そうとしている。なんと言っても力強い量感と動勢は魅力的である。作品は無骨に捩られた何本もの竹を縦に壷状の形に纏めた上昇気流を感じさせる潔い作品である。赤茶の着彩も作品の形と呼応して固い信念と勇気が籠められており作者のセンスの良さを感じる。肩口に取り付けられた二つの小さな耳冠は一考を要する。今後の更なる精進を期待したい。

-日原 公大-

優秀賞

縄文様花籃「卯」

 橋本 忠昭〔千葉県佐倉市

サイズ:31×46×16

 二重編みのゆりかご型に成形された花籃である。表は基本的に6本の竹ヒゴが一単位となり、あたかも縄を編んでいくように捩られて斜め上方に構築され、半ばから斜め反対方向に立ち上げられていく。内部の見込みは桝網代、立ち上がりは網代編みとしている。繊細で華麗な編みが作り出す文様世界は作者ならではのもので、これまで何度受賞しているが、本作はそれらを超えてまた新しいスタイルを作り出した。赤のアクセントも控えめで効果的である。それが「卯」であろうか。

-金子 賢治-


技能賞

襷文松葉編花籠

 小坂 鐡男〔千葉県流山市〕

サイズ:32×32×23

 白錆竹の松葉編みに茶褐色の刺斜線し(即ち、たすき文)とのツートンの美しさと、四ツ目底編の四脚高台から同編への豊かな型と相俟って、ふくよかで格調高い作品に仕上げた技術は、正に賞にふさわしい作品です。縁の一部に破綻がみられたのが残念。

-本間 一秋-


千鳥編花籃

 薄井 敬二〔栃木県さくら市〕

サイズ:31×31×33

 形体はシンプルだが、ディテールは変化に富んでいる。

 特に胴の部分は斜めの千鳥編になっていて、なんの変哲もない形に動きを与えている。又、二重編になっていて、内と外を茶と緑の反対色にしている為、重なっている部分が茶緑色に発色して重厚さをかもし出している。

 重なった部分と重ならない部分のバランスも絶妙だ。全体におさえた表現だが、かえって好感が持てた。

-藤原 郁三-


デザイン賞

寸胴

 小山 忠男〔東京都杉並区〕

サイズ:28×38×119

 文字通り寸胴(ずんどう)の照明器具である。孟宗竹を割り、ほぼ3種類の幅に揃えて、少し間をあけて支持体に打ち付けている。内側に張られた和紙を通して柔らかい光が洩れるようになっている。洩れるといっても直線的に光の縞が出現するので、竹の灯りと言ってもとてもモダンである。竹には布にしみこませたスティンを塗っている。その色感が竹の色と馴染み、縦縞の光同様にモダンな明かりを演出している。

-金子 賢治-


オブジェ「渦」

 杉浦 功悦〔大分県別府市〕

サイズ:75×36×31

 この作品は今回最も造形的な作品として、最初は評価が高かったが、器が中心の竹工芸の世界では斬新な形であっても、彫刻の世界ではよくある形という事で、残念ながら最優秀賞には選ばれなかった。

 しかしながら、竹の特性をうまく生かして、ハリのある形に仕上がっている。

 ふくらみの部分を更につなげて連続性をもっと強調すれば貝という特定のイメージから脱却出来るかもしれない。

 何かの形を連想されないで、回転する力だけをストレートに表現してほしかった。その方がオブジェとして、より存在感が増すのではなかろうか。

-藤原 郁三-


花籃「透彩」

 井上 守人〔栃木県那須塩原市〕

サイズ:22×22×32

 竹工芸には、編と組と丸竹の技法があるが、この作品は組みによる櫛目技法で表現された作品である。素材の幅を違えて曲線で空間にリズムを表出して、竹ならではの爽やかな表現は、心地良さが伝わる作品である。

-勝城 蒼鳳-


新人賞

進化Ⅱ

 渡辺 千明〔新潟県佐渡市〕

サイズ:70×43×45

 そりのある形で力強く、オブジェとしては、なかなかのカ作だ。

 しかしながら、変化のある形にしては、すべてシンメトリックに組み合わせている為、造形としては安定しすぎて、多少おもしろ味にかける。

 これからは、アンバランスの中のバランスという事を考えてみてはどうか。

-藤原 郁三-


巻き六ツ目編みバック

 服部 日出子〔青森県むつ市〕

サイズ:12×32×29

 六ツ目編で本体の形を作り、別の染めた材料で三方から六ツ目に巻き付けて加飾されている。籠で作られているバックは殆どが中が見えなく編まれているが、この作品は今迄の概念に囚われることなく、籠の爽やかな特性が生かされており好感のもてる作品である。

-勝城 蒼鳳-


雲竜

 鈴木 茂平〔埼玉県さいたま市〕

サイズ:24×24×47

 底を麻の葉編で始め、胴編は数枚ずつ合せて縁まで編み上げ、その先は返して胴に差して下方に流して纏めてある。従来は柾割の束ね編の作品が多く見かけられたが、平割材の作品のため一味違った趣のある線の動きが見所である。

-勝城 蒼鳳-