第22回全国竹芸展入賞作品(平成29年度)

最優秀賞

萌芽

 長谷川 絢〔大分県竹田市〕

サイズ:43×40×60

 柾割した竹ひごを12本束ね、のびやかな二つの環を形作っている。艶のある表皮を表に出しつつ、カーブの急な内側は粗く、緩やかな外側は密に編み上げている。極限まで薄く削ったひごは折れやすく、途中で一本でも折れればやり直しとなり、繊細な手わざを要する。竹の特性を存分に活かした造形である。

 古くは正倉院の華籠にもみられる。「束ね編み」は、主に籠の成型や装飾として用いられてきた。本作は、技法そのものがオブジェの構成要素となっている点が新鮮である。《萌芽》は、新たな竹芸表現を切り拓こうとする作者の姿勢をも感じさせる。

-鈴木 さとみ-

優秀賞

鉄線編盛籃「暁」

 内藤 節子〔栃木県大田原市〕

サイズ:38×38×19

 「暁」と題した作品名の通り、鉄線編みで編まれた盛藍からは美しい夜明けを感じさせる。中央は赤色に染め、端にいくほど黒色に変化している。染色した竹ひごの構成を変えることで、幻想的なグラデーションを表現。取っ手の部分も軽やかに鉄線編みを施し全体をまとめベテランらしい造形力のある秀作といえる。

-田辺 竹雲斎-


技能賞

縄文様花籃「戌」

 橋本 忠昭〔千葉県佐倉市〕

サイズ:41×46×20

 柾割材使用の作品で内と外と二個作り内側は縄目に白一行染二行の斜めストライプとし、外側は白一行染三行のストライプとなっている。この作品の魅力は外側も内側も竹の編み残りを応用して緑にしているので丸味のある柔らかな表現となっている。内と外とを合わせた縁の造り、高台の付け方、共に本体に合った籐縢りは大変技巧も素晴らしいと好感が伝わります。戌の銘に相応しい明るく爽やかな空気を醸している。

-勝城 蒼鳳-


デザイン賞

オブジェ「古生物」

 杉浦 功悦〔大分県別府市〕

サイズ:54×62×34

 幅広の長いヒゴが捻りの入った先辺で閉じられた列状のものが3角をなし、例えれば竜骨が螺旋状にうねったような制作である。深海か古代に生きた、透ける身体の細長い生物が泳ぐシーンを思い浮かばせる。連なる長いヒゴがたわみ揺らいで、生体を抽象化したかのような、原始の生命体を表している。

 大分・別府で伝統の技術を習得した作家であり、網代編みや長ヒゴを活用した制作で伝統工芸に活躍を示し始めている。本展では、長ヒゴのしなやかで伸びやかな特質を生かした立体を指向する造形によって、前回の文部科学大臣賞などの受賞を続けている。見ようによっては奇想の形体と映るかもしれないが、主題を造形化する意識としっかりとした技巧のバランスが良好に明らかにされていて、快活な印象を与える。各賞の候補として選考の上位にあった作品であり、本作品は、デザインに優れたポイントでの評価となった。

諸山 正則

新人賞

参球

 河村 卓馬〔大分県杵築市〕

サイズ:60×60×60

 六角星の文様が基本形になって円形を形作る。普段、見慣れたはずの球体だが、竹を折り曲げて作る繋ぎ目が妙に緊張感を生み、力強い塊を主張して目を引いた。そもそも、丸いフォルムを作るには勇気がいる。単純で完結しており、人の小細工が入り込む余地は少ない。しかし、果敢に攻め込む精神的な若き力に拍手を送る。だが、誠に残念なことに支えになる下部の形は、一考を要する。

-日原 公大-


初日

 西川 理〔大分県日出町〕

サイズ:35×35×35

 三角で作られた竹のパーツがリズムよく組み合わされている。中央は円形をしており、三角と円の構成が面白い。三角と三角のつなぎ目も丁寧に作られ、作者の制作に対するこだわりも見られる。竹の経験は1年と6か月しかない作者だが、デザイン的なセンスを感じさせる気持ちの良い作品に仕上がっている。今後が期待される。

-田辺 竹雲斎-